Column
2022年12月に新たな航空法がスタートする。大きな目的は2023年3月までに「レベル4飛行の実現」をすることだが、今回の改正ではライセンス制度や機体認証制度など新しい制度により構成される規模の大きい改正なので、無人航空機に関する航空法を一から学び直すほどの情報量がある。そこで下記のように5回に分けてその概要を解説する。
①改正航空法の全体像 →(5月11日付け掲載)
②機体認証制度 →(5月18日付け掲載)
③操縦ライセンス制度 →(5月26日付け掲載)
④運航管理要件(運航ルール)→(6月3日付け掲載)
⑤運航管理システム →(今回)
再び「運航管理」という言葉が出てきたが、これは④で取り上げた操縦者や事業者が努める運航管理ではなく、不特定多数の無人航空機の交通整理をする航空管制という意味に近い。つまりレベル4の飛行が増えた場合に、無人航空機の運用全体を俯瞰する機能が交通整理をして衝突や障害を防ぐことが目的のシステムで、UTM(UAS Traffic Mnagementの略)と呼ぶ。
この制度は現在「検討中」というフェーズで、12月の改正航空法には盛り込まれない。現時点では目的の説明と実験的な実績についての説明のみになる。
航空管制と言っても、管制塔ができて管制官が口頭指示るわけではなく、FISSなどで得られる運航情報などを統合して当該システムが自動的に処理し、その結果を各運航者に転送する仕組みで、いわばそのネットワークに接続した状態で運航することでコンフリクトを回避しようというもの。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で行われた実証例では下の図のようなシステム構成になっている。
この実証事例ではまずシステムの基幹部となるFIMS(Flight Information Management System)を構築する。ここは地図地形情報、気象情報、運航情報などを統合し、安全な空域を確保する役目を果たす。ここに提供される情報に不足や誤りがあってはならない重要な機能を受け持つ。
このFIMSの情報を運航者に提供するために接続サービスをするのはUASSP(UAS Service Provider)で、複数の存在が想定される。実際の運用ではUASSP同士の相互接続が前提となる。
運航者は各自の運航のシステムFOS(Flight Operation System)を任意のUASSPに接続した状態で飛行する。
当然のことながら、次の図のように空域の混雑度合いや各運航のリスク評価によってUTMの適用内容が段階的に変わることが考えられる。
改正航空法の施行によってレベル4飛行の門戸が開かれ、無人航空機の産業利用に向けた運用者のシステム開発が一気に加速することが考えられる。このUTM制度も本来なら12月の施行と同時に必要な制度といえる。具体的な内容発表まで、まだしばらく時間が掛かりそうだが、それほどの時間的余裕は無い。
12月の改正航空法施行に向け、新たな発表等があれば随時このコラムで解説する予定です。
横濱 和彦 Kazuhiko Yokohama
1951年生まれ 2012年 空撮チームairvision 立ち上げ映画、TVCM、PR動画、MVなどの撮影をする。MVなどの撮影をする。アマナドローンスクール校長として座学講習や責任者も兼ねる。
【代表作】・JR東日本、JR東海 CM・ヤクルト CM・トヨタ、レクサス PV・レッドブル MV
■実績 総飛行時間:543時間 夜間飛行時間:35時間 目視外飛行時間:25時間
■資格 DJIインストラクター、JUIDA無人航空機操縦技能ライセンス、JUIDA無人航空機安全運航管理者ライセンス、JUIDA認定スクール講師ライセンス、第三級陸上特殊無線技士