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コラム

Column

EPISODE15: おじゃま虫たち

プロの空撮エピソードから学ぶ
 2011年に株式会社アマナでプロの空撮チーム「airvision」を立ち上げた横濱校長が、機体の開発からCMの撮影まで10年に亘る長い経験の中から全てのドローン運用者に向けたアドバイスをシリーズでお届けします。今回のテーマは「おじゃま虫たち」です。

 虫といえば夏ですよね。いよいよ本格的な冬という時期に、著しく季節感のないテーマで恐縮です。以前のエピソードで、残暑厳しい折に「寒冷機のフライト」の話をしたことを思い出しました。どうやらこの筆者は寒くなると夏のことを、暑くなると冬のことを思い出す天邪鬼ようです。今季一番の寒気が来たという日に真夏の出来事です。お付き合いいただければ幸いです。

 

 

 2014年夏、酷暑のある日、ゴルフ場での撮影がありました。写真はその時のものです。まだ午前中ですが、高気温と高湿度でもうバテてます。おまけにインカムがイヤーマフ仕様なので耳がムレムレです。ゴルフ場でドローン空撮というとコース紹介のような映像を思い浮かべますが、その時はプレイヤーの俯瞰撮影や、ボール目線、グリーンオンのボールを追うなどの凝った撮影が多い仕事でした。使用する機体はいつもの大型機。17インチのカーボンプロペラを8枚搭載しています。

 

 撮影も後半になり、グリーン周りで飛んでくるボールを追うという撮影になりました。ボールは実際にグリーンから150ヤードの付近から打ってきます。打つ人はアマチュアなので精度は高くなく、広範囲にバラつきます。おかげで撮る方は大変。なかなかいい絵が撮れません。長時間の撮影になりました。そんなときに想定外の事態になってきました。グリーン周りは木立に囲まれていることが多いのですが、そこもかなり密な林に囲まれていました。整備された林ではなく、原生林に近いものでした。そのそばでドローンを飛ばしているとさまざまな昆虫がドローンに近づいてくるのです。

 

 午後、時間が遅くなるほど虫たちは増えてきます。一番多いのはトンボ。次いでカナブン、アゲハ蝶など。それらが何故か飛行するドローンに集まってきます。ドローンが発するプロペラの音に釣られてくるということらしいのですが、よくわかりません。当然、彼らはカーボンのプロペラに粉砕されます。四分割くらいに粉砕の音が出た後、トンボの羽がひらひらと舞います。特にアゲハ蝶の羽は綺麗に舞っていました。そんなわけでこの時はプロペラが虫の体液でベトベトになりました。どうやら小さなものもたくさんいたようです。夏場の撮影は他にもありましたが、これほど虫を殺した記憶はありません。他の撮影で、操縦中に体長1cmくらいの大きなアリが手に這ってきて、悲鳴を上げて助けを求めたスタッフもいました。撮影中は手を離せませんからね。また夕方になると目の涙に群がってくる細かな集団の虫もいますよね。蚊に刺されたり、アブに食われたり、ロケでは虫のトラブルがつきものです。

 

 

 夏場の撮影では虫除けスプレー、殺虫剤、そして治療薬などの準備をお忘れなく。またプロペラのメンテナンスも要注意。虫の死骸などがこびりつくと飛行音が変わったり、バイブレーションが出たりします。アルコールを付けて拭き取るようにしましょう。

 

 2021年のコラムはこれで終了にします。お読みいただきありがとうございました。みなさま良いお年をお迎えください。

 

横濱 和彦 Kazuhiko Yokohama
1951年生まれ 2012年 空撮チームairvision 立ち上げ映画、TVCM、PR動画、MVなどの撮影をする。MVなどの撮影をする。アマナドローンスクール校長として座学講習や責任者も兼ねる。
【代表作】・JR東日本、JR東海 CM・ヤクルト CM・トヨタ、レクサス PV・レッドブル MV
■実績 総飛行時間:543時間 夜間飛行時間:35時間 目視外飛行時間:25時間
■資格 DJIインストラクター、JUIDA無人航空機操縦技能ライセンス、JUIDA無人航空機安全運航管理者ライセンス、JUIDA認定スクール講師ライセンス、第三級陸上特殊無線技士