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コラム

Column

EPISODE6: 離着陸のトラブル

プロの空撮エピソードから学ぶ
 2011年に株式会社アマナでプロの空撮チーム「airvision」を立ち上げた横濱校長が、機体の開発からCMの撮影まで10年に亘る長い経験の中から全てのドローン運用者に向けたアドバイスをシリーズでお届けします。

今回のテーマは「離着陸のトラブル」です。


 ドローンの離陸と着陸は水平で十分に広い場所が欲しいですよね。傾斜だけでなく、草が伸びていたりホコリや砂が多くても不安です。一般的にちょっとした機体の破損は離着陸の際に起きることが多いのです。最近の製品では小型でもプロ向けの撮影データが撮れるようになってきたので事情が変わってきましたが、デジタルシネマカメラを積む大型機を使っていた当時の私たちにとって離着陸場所の問題は重大でした。

 

 

 

 実際のロケでは水平で理想的な場所が無いことが多く、とんでもなく遠い場所から離陸したり、傾斜地で危うい離陸を強いられたり、砂が舞い上がってえらい目にあったりと、離着陸のトラブルのネタは尽きません。
 ほとんど岸壁しかない東尋坊ではわずかな草地を見つけてドキドキの離着陸を強いられました。春日大社では本殿の撮影に300mも離れた場所から離陸し、遥か彼方に飛ばしました。山形県の某山中ではグズグズのぬかるみから離陸して機体の脚をとられ、離陸を失敗したこともあります。(水平な場所で離陸できなかったこともありますが、これは別なお話なので後日…)
 いずれも直径120cm、重量16kg、搭載カメラ600万円、装着レンズ200万円という状態のドローンです。何度経験しても嫌な汗をかきます。

 

 さらに特殊な例は船の上からの離着陸です。撮影にお借りする小型船の多くは甲板にほとんど水平で広い場所が無い上、常に上下に、しかも不規則に揺れています。我がチームのエースパイロットである小林先生でも緊張を敷いられる一瞬です。写真はその船上の離着陸用に水平なデッキを特設した例です。
 上下に揺れる船では船が下がる時に着陸しないと静かな着陸ができません。海上は風も強いのでそのタイミングと機体の位置どりを間違えると姿勢を崩し、思わぬ事故につながります。

 

 というように大型機ではさんざん苦労しましたが、やがて我がチームの主力機がDJIのインスパイア2になると状況が一変します。現場の装備全体がコンパクトになり、多少の傾斜も気にすることなく、離着陸のスペースも少なくて済むようになります。それにインスパイアならサイズも重量もハンドリリースが可能なレベルになりますので、離着陸場所の問題は大幅に改善されます。

 

 

 ハンドリリース&キャッチは状況によっては大変便利な離着陸方法になりますが、同時に危険が伴うので基本的にお勧めはしません。それでもという場合は機体のどの部分をどうやって持つかしっかり確認してから実行するように。そしてキャッチャーはヘルメット、革手袋、保護メガネ、長袖の服などで体を防護することも必要です。特にキャッチの際はプロペラ止まるまで機体を水平に支持しておきます。止まる前に機体を傾けるとセンサーが反応して急に回転が上がったりして危険です。
 パイロットはスロットルを上げるタイミング、止めるタイミングをしっかり確認して、声を掛け合って操作しましょう。安全な場所でちゃんと練習してくださいね。

 

横濱 和彦 Kazuhiko Yokohama

1951年生まれ 2012年 空撮チームairvision 立ち上げ映画、TVCM、PR動画、MVなどの撮影をする。MVなどの撮影をする。アマナドローンスクール校長として座学講習や責任者も兼ねる。

【代表作】・JR東日本、JR東海 CM・ヤクルト CM・トヨタ、レクサス PV・レッドブル MV

■実績  総飛行時間:543時間 夜間飛行時間:35時間 目視外飛行時間:25時間

■資格 DJIインストラクター、JUIDA無人航空機操縦技能ライセンス、JUIDA無人航空機安全運航管理者ライセンス、JUIDA認定スクール講師ライセンス、第三級陸上特殊無線技士